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ますますキリスト教原理主義国家化しつつある

ついこの前、アメリカの連邦最高裁判所において人工妊娠中絶を「憲法上の権利」と認めない判決を下したことで、中絶=違憲。と見なしたことから、中絶賛成派と反対派の分断が高まりそうな感じがするけど、1973年の「ロー対ウェイド判決」(中絶の権利を認めるもの)から半世紀近くとなるこのタイミングで決まったとなれば、なお更かも知れない。ましてや女性の権利というか選択の自由にも関わる問題であり、複雑な問題だ。

胎児にも命があるからそれを無駄にするなど言語道断だと見なすキリスト教福音派からなるキリスト教原理主義者の主張がまかり通ったとなれば、この判決となった背景としてキリスト教原理主義的な価値観がアメリカ社会において幅を利かせてるってことだ。
ただでさえ信仰心が日本人よりも相当あるアメリカ、町に行けば必ずや教会が一つあるくらいだし、日常生活において常にキリスト教が欠かせないものとなっているけど、宗教に対して疎いというか興味や関心が薄い日本人から見れば面喰らうでしょうね。

日常生活においてキリスト教が根付いているアメリカ、当然考えや価値観がキリスト教に基づいているわけで、当然聖書も絶対視している。大統領の就任式において新大統領は左手を聖書の上において、右手を掲げて宣誓するだけでなく、最後には「アメリカに神のご加護を」ってセリフで締めるのは有名な話。
聖書に書かれていることは絶対であるという理屈があるせいか、人間は神が造ったという創造論を絶対視するせいで「『進化論』を教えるなどとんでもない」という空気が根強く、州によっては「進化論禁止法」なる法まであるんだから、見方によっては言論弾圧になるんじゃないのか?
中絶に反対する空気が強いのも聖書の影響が色濃く出ている。神がノアの一族に対して「産めよ増やせよ地に満てよ」と言ったから、中絶なんてとんでもないと思うわけで、また同性愛や同性婚に対しても聖書の教えに反する。って理屈で否定的な考えがキリスト教原理主義者に根強いんでしょうね。中西部や南部の州に特に多いキリスト教原理主義的価値観、南部に関してはこれだから人種差別も根強く残ったんでしょうけど(公民権法が出来てから表立った差別はなくなったが、未だ差別や偏見は残っている)。

聖書は絶対、進化論を教えたり中絶、同性愛や同性婚はダメという理屈を掲げてアメリカ社会を牛耳るキリスト教原理主義、かねてからキリスト教原理主義国家であるアメリカ、今回中絶を違憲とする判決が今後同性愛や同性婚はタブーという空気になりかねないし、下手すりゃキリスト教的でないものを❝排除❞なんてことにもなりかねない。神社仏閣やモスクへの攻撃や強制的な閉鎖ということになればなお更。即ちアメリカにキリスト教以外は認めないなんてことになれば「自由の国」でなくなるわ。マイノリティにとって居心地の悪い空気となるのも確実。
キリスト教以外の宗教を認めないなんて、今後アメリカにおいて市民権を得たいならキリスト教に改宗しろなんてこともあり得る。これは信仰の自由に抵触しそうなんだが。

今回の中絶を違憲とする判決はヨーロッパからも批判の声が挙がったが、個人の自由というか選択を脅かすもので許し難いという意見からでしょうね。他国に対して人権を訴えるアメリカなのに自分たちは人権を尊重していないのかってブーメランにもなりそうだ。人種の問題もあるし。

ますますキリスト原理主義国家化したら、アメリカから「自由」と「多様性」がなくなるリスクがあることを注意深く見たほうがいいかも知れない。今回の中絶を違憲とする判決はキリスト教原理主義者を勢いづかせ、リベラル派との溝が深まって社会の分断が進みそうでならない。

theme : ここがヘンだよアメリカ
genre : 政治・経済

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