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「10人の勇敢なライオンと1人の愚か者」

 ワールドカップにおいて最も注目を集めるカードの一つと言えばアルゼンチンイングランドが挙げられますが、これまで記憶に残る激闘を度々演じてきたことはイザ知らず、1982年のフォークランド紛争に代表されるフォークランド諸島(アルゼンチンではマルビナス諸島と呼んでいある)の領土問題が背景にあるなど、加熱する対決と言えます。政治とスポーツがごっちゃになったような、日韓戦とは違う意地とプライドのぶつかり合いかも知れません。14年前にフランスで行われたワールドカップでもこの両国が決勝トーナメントで当たりましたが、その試合もまたサッカーファンの記憶に残る試合と言えます。今から14年前の今日1998年6月30日は、FIFAワールドカップ・フランス大会決勝トーナメント1回戦、アルゼンチン対イングランドの試合が行われた日です。この試合がある選手の「受難の始まり」でもあったのです。

 1998年にフランスで開催されたFIFAワールドカップ、グループHを3連勝で決めたアルゼンチンと、グループGで2位に終わったイングランドがいきなり決勝トーナメント1回戦で当たり、サッカーファンの注目を集めました。
 6月30日、フランス東部にあるサンテティエンヌで相まみえた両国、決勝トーナメントと言うことで負けられないピリピリした雰囲気がスタジアムを包み、試合は始まりました。

 試合は前半5分にイングランドがペナルティエリア内でファウルを起こしアルゼンチンにPKを献上、これをガブリエル・バティストゥータが難なく決めてアルゼンチンが先制すると、アルゼンチンサポーターは「見たかイングランド!」と言わんばかりの大歓声を上げますが、先制されたイングランドに焦りはなく、先制してすぐの前半9分、今度はアルゼンチンがイングランドにPKを献上すると、イングランドのエースアラン・シアラーに決められて同点となり、試合は先制してすぐ追いつくと言う早い展開で始まったのです。
 同点に追いついたイングランドは、前半16分に今大会イングランド最大の発掘と言うべきフォワードのマイケル・オーウェンアルゼンチンディフェンスを翻弄する個人技で勝ち越し弾を叩きこむと言う大技をやってのけ、イングランドサポーターの快哉を呼んだのだった。50メートルぶっちぎりシュートでゴール、かつてイングランドがあのディエゴ・マラドーナにやられたゴールを彷彿させるゴールで「お返し」弾ですから、イングランドサポーターからすれば「してやったり」だろう。マラドーナにやられたゴールでそっくりそのままやり返したんだから。

 試合はイングランド1点リードで前半を終えるところまで来たが、意地にかけてもイングランドに負けるわけにいかないアルゼンチン、前半終了45分にハビエル・サネッティが同点弾を叩きこんで消沈したアルゼンチンサポーターを奮い立たせたのだった。

 2-2の同点で前半を終了した両者、後半に巻き返しを図ろうとしたところ、事件が起こったのです!!
 イングランドの当時若き司令塔だったデイビッド・ベッカムをこの試合しつこくマークしていたディエゴ・シメオネが後半に入ってもさらにベッカムを削るプレーをし、後半開始2分(即ち47分)、シメオネの執拗なプレーにベッカムがうつぶせに倒れたところ、近づいてきたシメオネに何と!! 後ろ足で蹴りあげると言う報復行為に及んだのだった!!

 倒れるシメオネ「ファウルだ!」と言わんばかりにアピールするアルゼンチンイレブン(私の記憶では主審に激しくアピールしていたのはファン・セバスティアン・ベロンだったのを写真で見たことがある)、激しくどよめくスタジアム、これを主審のキム・ミルトン・ニールセンが直ちにホイッスルを吹く、ベッカムとシメオネは呼び出され、倒したシメオネにはイエローカード、そして報復行為を起こしたベッカムには何と!! レッドカードを突き付けたのです!!

 愚かな報復行為で退場となったベッカム、そして一人少なくなったイングランドは不利となりますが、後半はお互い隙を見せず2-2の同点のまま90分を終了、延長戦に入りますが、延長戦でも両者決着つかずPK戦に、1人目は決め2人目はお互い外すと言う緊迫した瞬間となりますが、3、4人目はお互い成功する展開となり、運命は5人目に委ねられましたが、アルゼンチンは5人目のロベルト・アジャラが決めたもののイングランドは5人目のデイビッド・バッティがまさかの失敗・・・、アルゼンチンが準々決勝に駒を進めたのでした。1986年大会に続いてまたもイングランドを倒したアルゼンチンにとっては「返り討ち」にしたと言えます。
「イングランドは一生我々に勝てない!」「これからもお前たちイングランドを負かしてやる!」「オーウェンよ、マラドーナに肩を並べようなどとは100年早い」と強気なアルゼンチンでしたが、一方のイングランドは意気消沈の一言しかないです。

 しかしこの試合は思わぬ波紋をイングランドで読んだのだった・・・。
 翌日の新聞は一斉に「10人の勇敢なライオンと1人の愚か者」と言う見出しを載せ、10人になりながらも果敢に戦った代表選手たちを褒め称えた一方、愚かな行為で退場処分となり敗北の要因を作ったベッカムには名指しで猛烈なる批判を浴びせたのです。
 ワールドカップの舞台において、自分の愚行でチームの負けを作るきっかけになったことにファンからの批判に痛感せざるを得ないが、ここまで叩かれたことにはベッカムにとってはキツいものがあるでしょう。しばらくしてベッカムは所属するクラブ(当時マンチェスター・ユナイテッド)で活躍するも、ワールドカップでの退場劇の記憶が生々しいだけにファンからは批判を浴びる結果となったのだから、いかにワールドカップが影響力の高いものと言えます。

 それからと言うもの、ベッカムがイングランド代表で名誉を挽回するのはあと3年待たねばならなかったのでした・・・。

theme : FIFAワールドカップ
genre : スポーツ

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